今回ご紹介するのは、真鍮製のバックルを軽量素材で作り変えた事例です。
実物の持ち込みがあり「この形状で軽量化できないか」とご相談に来られたことがきっかけでした。
早速重量を測ってみたところ、真鍮製のバックルは58gほど。
より軽量の素材をリストアップし、提案していく形をとりました。
まず、真鍮素材の製品について少し解説します。
真鍮は鋳造や加工がしやすく、古くから多くの金属加工業者で取り扱われている素材です。
独特の重厚感があり、仕上がりも煌びやかなので、金属系のアクセサリーなどで使用する素材として人気があります。
しかし、湿気に弱いというデメリットがあり、使い続けることで徐々に黒ずんできたり、もともとの煌びやかな色合いがくすんでしまいます。
「それも真鍮のいいところ」という方も多いですが、一方で「だめな部分だ」と考える方がいることも事実です。
今回のご依頼主様は、バックルの色がくすみ、輝きがなくなってきたことでも少しお悩みのご様子でしたので、2種類の金属素材をご提案し、サンプルとしてご確認いただきました。
今回、当社『杉原産業』からご提案した素材は「アルミ」と「スズ」の2種類です。
それぞれの写真から、各素材の特性を紹介します。
まず1つ目は、アルミのご紹介です。
簡単にまとめると以下のような特徴を持ち合わせている素材です。
アルミというとアルミホイルや缶などのイメージが強く、「安っぽい」というイメージを持たれる方もいるかもしれません。
実際、軽量で加工しやすいため、生活の一部として使われるものの素材として認知されています。
しかし、アルミは現在、鉄や銅に並ぶほどポピュラーな金属素材であることをご存知でしょうか?
例えばアルミの特徴として、軽量であること以外に、通電性・熱伝導率・反射性が高いというものがあるのですが、この特徴を活かして「飛行機の機体」や「スマートフォンの部品」「宇宙服の素材」など、さまざまな分野で使われているのです。
金属素材としてはトップレベルの軽さを誇ること(今回製作したバックルはわずか14.5g)が大きなメリットですが、「やわらかさ」という特徴でみると「傷がつきやすい」というデメリットがアルミを使用する上での懸念材料です。
しかし、アルマイト処理を施すことで、「傷のつきやすさ」という特性を軽減することも出来るため、一概に「傷がつきやすいから駄目な素材だ」とは言い切れません。
続いて、「スズ(錫)」の紹介です。
スズの特徴としましては、
上記の3つが代表的な特徴です。
写真を見ると、アルミに比べて少し光沢が綺麗なようにも見えますね。
アルミ同様に、熱伝導率が高く、タンブラーの素材としてもよく使われています。
錆びにくい素材なので、定期的に手入れをすることで「仕上がり時の状態を保ったまま」長く使うことができ、愛着がわきやすいのがスズの良さといえるでしょう。
製作したバックルの重量は46.3gと、アルミよりも重量がありますが、それでも真鍮よりは軽くすることが出来ました。
今回は、お客様のご要望にあわせて2種類の金属素材でサンプルを製作した事例を紹介しました。
金属素材はかなり種類が豊富で、今回のようにどの素材を使うのかによっても大きく変わりますが、同じ素材を使って変化をつけることが出来る場合もあります。
例えば、ステンレスなどはその代表格で、用途に応じてさまざまな規格に分かれており、少し規格を変えるだけで、まったく違う特性のものが出来たりします。
素材に関しては一長一短であることも多いですが、お客様の理想により近づけるために、杉原産業では、要望にあわせた素材の提案なども行っています。