今回は大阪のお祭り「だんじり」で使うヒートン金具のご依頼です。ヒートン金具自体は釣具やアクセサリなどにも使用されている金具で、一般に広く流通していますが、今回の依頼は100個という
小ロットだったことと、また、だんじりの神輿に下げる房は重いため、それに耐えうる、太く、長いものを、とのことでご依頼をいただきました。
ちなみに「ふさ」とは組紐の先端部の房のことです。神輿の四角にも下げることは多いですが、だんじりのふさは巨大で、荒々しい神輿の動きに合わせて振られるため、それを下げるヒートン金具もそれだけ丈夫なものが必要です。
ずいぶんご希望のものを探されたとのことでしたが、作ってくれるところがどこにもなく、困られて弊社(杉原産業)のサイトをご覧いただいたと聞いては、引き受けないわけにはいきません!
今回はもともと規格に無いサイズをご希望だったので、実際のヒートン金具を作るための「ダイス」と呼ばれる型がありませんでした。ダイスとは、ネジ山をつけるための治具のことで、金具製作には必ずこの治具が必要です。今回はまずはそのダイスを作るところから作業を開始しました。
超硬合金を使ってダイス(治具)を作る
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ステンレスを寸法を測って切断
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ねじ切り(ステンレスにネジ山をつける)
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輪の部分を成型・溶接
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バレル(磨き作業)
まず今回の依頼を受けたきっかけとして、作ってくれる所がなく、困られている、というのが一番にありました。今回のように規格にない金具を作るときは、どこの会社もそうだと思いますが、その金具を作るための冶具からの製作になります。
やっている所がない、規格にないというのは、もちろんそれだけ需要が薄いということが挙げられますが、どこもやらないことを「やる」ことに値打ちがあると私どもは考えます。
もちろん苦労もしましたが、試行錯誤の結果、ご希望に沿ったヒートン金具を作ることができました。出来上がったヒートン金具は先端の輪の部分は溶接加工しているため、ろう付け加工に比べてかなり強度があります。
また、ステンレスも当初は太さが4ミリのものを考えていましたが、ヒートン金具としてはかなり太い4.5ミリの線を採用することで、少々のことでは曲がらない丈夫な金具として仕上げることができました。当然、金属ですので、太ければそれだけ加工には技術が必要になりますが、それもお客様に満足いただいた結果を思うと、弊社としてもご期待に添えたのではないかと嬉しい限りです。だんじりといえば関西では大きな伝統あるお祭りです。その神輿に下がる房。そこに弊社の製品が使われていることを想像すればこんな達成感はほかにありません。